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January 24, 2024

私的2023年海外劇映画ランキング

海外劇映画ランキングに移ります。

これまではベスト10位内に収めようと候補を削っていましたが、2023年は候補はすべて列挙します。

そのため22位までと長くなります。

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海外劇映画ベスト22

 

1. SHE SAID/シー・セッド その名を暴け

今作は劇映画ベスト1、総合でもベスト1にしようか迷った映画です。

実話ベースや実話からインスピレーションを得た映画が上位を占めていまして、今作はかのハーヴェイ・ワインスタインの性加害事件をNY Timesが調査報道した話を映画化しています。

もちろん米国映画で、マリア・シェラーダー監督作です。

ワインスタイン氏の長年の性加害がなぜ表沙汰にならなかったのか、性被害者がなぜ世間に訴えられなかったのかが痛いほど伝わってきました。

性被害事件を下手に説明するくらいなら今作を見せた方がいいと思うくらいの出来です。

 

2. あしたの少女

韓国映画でチョン・ジュリ監督作です。

高校生が実習生として働き始めて3ヶ月後に自死した実話をベースにし、いくつもの罠が仕掛けられて自死へ追い立てられるかのようでヒリヒリした感覚を味わいました

また、捜査する役のペ・ドゥナが良いです。

 

3. 聖地には蜘蛛が巣を張る

デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス合作で、アリ・アッバシ監督作です。

イランでの娼婦連続殺人事件の実話をベースに展開されますが、殺人事件そのものよりも殺人犯逮捕後の世間の反応が恐ろしかったのです。

正義だと思って殺人犯が行動した故に非難する声も虚しく聞こえ、慣習や伝統って奴は高い障壁なのです。

 

4. キリング・オブ・ケネス・チェンバレン

今作は実話を再現したかのような展開で、人種差別も原因だけど意思表示の難しさもあるんだと心が苦しくなりました。

米国映画でデヴィッド・ミデル監督作です。

 

5. アシスタント

名門大卒で映画プロデューサーになることを夢見て有名エンターテインメント会社に入った女性がパワハラ、セクハラなどに次々と遭うストーリーはフィクションですが、恐らく複数の人のエピソードを再構成したものでしょう。

米国映画でキテェ・グリーン監督作なので、米国のエンターテインメント企業ならありそうなリアリティさでした。

日本でも起こっていそうなことであり、もっと小さいけど私も経験したようなこともありました。

 

6. シック・オブ・マイセルフ

ノルウェー・スウェーデン・デンマーク・フランス合作でクリストファー・ボルグリ監督作なので、俳優は誰も知らないし社会事情も全くわからないけれど、この承認欲求の主と自己顕示欲の主には覚えがあるぞとじっと見つめてしまいました。

実話を元にしていないでしょうが、類似の事件を参考にしているはずで、薬は注意すべし!と改めて思います。

 

7. リアリティ

2016年米国大統領選挙へのロシア介入疑惑に関する機密情報をリークしたNSA契約社員の逮捕劇を、捜査資料と録音資料を再現して映画化したもので、もちろん米国映画でティナ・サッター監督作です。

劇中に資料が示されて俳優が再現していると証明しつつ映画は進むのに、訴えかけてくる力強さは何なのでしょう。

 

8. 生きるLIVING

ようやく現実から離れた完全なるフィクションで、黒澤明監督作「生きる」のリメイク作です。

元の映画を観ていると、ビル・ナイを主演に脚本をカズオ・イシグロ、監督はオリヴァー・ハーマナスでの英国・米国の合作も本質をがっしり掴んでリメイクした名作と断言できます。

 

9. CLOSE/クロース

実話ベースではありませんが、現代の子供の間では起こりそうな、起こっていそうな事件の前後を描いているので身近に感じました。

ベルギー・オランダ・フランス合作でルーカス・ドン監督作です。

 

10. キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

米国映画でマーティン・スコセッシ監督作で上映時間が3時間超ならばフィクションと思いきや、犯罪ノンフィクション小説の映画化であり、先住民族を巡る連続殺人事件の実話を元にしています。

俳優陣も見どころがあり、ストーリーも役どころも陰惨であり陰湿であり根深い闇があり、噛み応えたっぷりの映画です。

 

11. PIGGY

ポスターからはスプラッターホラーかと想像してしまうインパクト大のスペイン映画でカルロタ・ペレダ監督作です。

いじめに遭っている女の子がいじめっ子が誘拐される場を目撃したところから展開が始まる映画ですが、単なるホラーに終わらないドラマに仕上がっている点が素晴らしいと思います。

 

12. エンドロールのつづき

やっとほっとできる映画が入りますが、ここからは簡潔な説明にします。

インド・フランス合作で、「ニューシネマパラダイス」のような、フィルム映画の良き時代を思い出させるよくある展開になるだろうとだらーっと観ていたら、正にエンドロールの続き、フィルム映画の次を見せた展開に惚れました。

 

13. ノートルダム 炎の大聖堂

また実話ベースに戻りますが、まだ記憶にも新しいノートルダム大聖堂の火災を時間経過に沿って再現したかのような映画です。

フランス・イタリア合作でジャン=ジャック・アノー監督作と知って観に行ったら、精密な再現を見せつけられて降伏しました。

 

14. カード・カウンター

米国・英国・中国・スウェーデン合作でポール・シュレイダー監督作、好きなオスカー・アイザックが主演となれば観に行くしかありませんでした。

ストーリーもわかるけどそれよりもこの雰囲気を作れるなんて凄い!と二度観ました。

 

15. オマージュ

韓国映画の2本目で、今作はほっこりしました。

古い映画の修復作業をすることになった映画監督が次第に力を注ぎ始めて昔の映画にオマージュを捧げるストーリーは、昔の映画への新しいリスペクトで、この映画監督が女性という点が秀逸でした。

 

16. キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩

ウクライナ・ポーランド合作で、ナチスによるユダヤ人狩りを逃れようとする、人種の異なる3家族を描いたフィクションではありますが、素晴らしいストーリー展開でした。

 

17. ベネデッタ

フランス・オランダ合作、ポール・ヴォーホーヴェン監督作で、同性愛を告発された修道女の伝記を映画化したものですが、同性愛云々よりも愛しただけだと主張する修道女の先進的な姿が眩しかったです。

 

18. ワース 命の値段

3.11のワールドトレードセンターテロによる犠牲者への補償を担当した弁護士の実話をベースにした映画で、米国映画ですけど人間たる者は数字ではなく人間を見て仕事をすべきと再認識しました。

 

19. シモーヌ フランスに最も愛された政治家

全く知らなくて申し訳なかったのですが、タイトルになっているシモーヌは女性だからという理由で政治家に祀り上げられているのではなく、実力と信頼で政治家を続けた女性だったと初めて知りました。

もちろんフランス映画です。

 

20. ヨーロッパ新世紀

ルーマニア・フランス・ベルギー合作で、現代のルーマニア・トランシルヴァニア地方を舞台に人種差別を描いた力作だと思います。

 

21. 青いカフタンの仕立て屋

フランス・モロッコ・ベルギー・デンマーク合作で、モロッコを舞台にした伝統衣装のカフタンの仕立て屋を巡る、現代らしい映画で郷愁を漂わせるだけの映画では終わりません。

 

22. バーナデット ママは行方不明

最後は唯一のコメディ映画で、好きなリチャード・リンクレイター監督作の米国映画です。

勢いのあるストーリー展開に魅了され、ケイト・ブランシェットは何でも演じられる女優と再確認しました。

January 23, 2024

私的2023年日本劇映画ランキング

最後は日本劇映画ランキングです。

こちらもベスト10には収まり切れませんでした。

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日本劇映画ベスト13

 

1. Single8

日本映画はどうしてもマイナー公開の映画が上位に来る傾向があり、今作は知られてないかもしれません。

小中和哉監督が自身の映画製作を始めた若き頃を映画化したもので、主演は上村脩、高石あかりです。

日本に限らず、自身の映画製作の始まりを映画にする監督はいますが、なぜか今作は力が入って熱くなってしまいました。

 

2. 雑魚どもよ、大志を抱け

今作は好きな脚本家でもあり監督でもある足立紳監督作で、舞台挨拶を狙って名古屋まで行って観ました。

足立監督の経験を元にはしていますが、ストーリーはフィクションなのに熱くなりました。

質問までしてしまったのですよ、舞台挨拶で。

青春物には弱いです。

 

3. Winny

タイトルでわかるようにWinny事件の容疑者にされた金子勇さんを描いた映画です。

下位にも複数登場する東出昌大の演技が凄まじく、松本優作監督もやるじゃんと感心しました。

 

4. 怪物

是枝裕和監督作で、安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子が主演した映画ながら、是枝監督には珍しくはっきりくっきり描くのを避けたと感じました。

問題提起型なので日本映画の型から出ようとしているのかもしれません。

 

5. PERFECT DAYS

現在上映中の日本・ドイツ合作で監督ヴィム・ヴェンダース、主演役所広司の映画です。

こんな生き方をしたいという願望の表れなのかヒット中で「人生フルーツ」のヒットと同じ理由なのかもしれません。

斯く言う私もシンプルな生き方に憧れがあり、ヴェンダース監督も好きなので観ました。

 

6. 正欲

原作小説は未読ながら、社会が正しいとする道から僅かに外れた人たちを淡々と描きつつ、傍観者となる稲垣五郎演じる検事が気づくストーリーと岸善幸監督は見事でした。

 

7. 愛にイナズマ

「月」で脚光を浴びた石井裕也監督ですが、私は今作の監督ぶりの方が上だと思います。

破綻していそうなストーリーで、主演が松岡茉優、窪田正孝、池松壮亮、若葉竜也、佐藤浩市という一種の群像劇をよくまとめたものだと感心しました。

 

8. 春に散る

瀬々敬久監督作で、主演が佐藤浩市と横浜流星という目を引く映画ですが、オーソドックスに見えて突き抜けた感のある映画でした。

 

9. 遠いところ

沖縄の現状を伝える映画で、工藤将亮監督作です。

文字だけでは十分に伝わらない、若い女性の生きづらさを十二分に伝えていると思います。

 

10. 福田村事件

関東大震災直後のデマが元で起こった福田村事件を映画化したもので、森達也監督が製作する重要性を準備段階から主張されていましたが、出来上がった映画を観てなるほどその通りだと実感しました。

主演は井浦新、田中麗奈、永山瑛太、そして東出昌大も共演してます。

 

11. アンダーカレント

すみません、ここから井浦新3連弾になります。

今泉力哉監督作で、真木よう子と井浦新が主演してます。

今泉監督作はストーリー展開がうまく生きていて、何気なく話が進むと思いきや終盤になって一気にめくり上がっていくように結末を迎えていました。

 

12. 青春ジャック 止められるか、俺たちを2

今作は誠に申し訳ありませんが、先行上映で観ました。

一般公開は2024年です。

井上淳一監督作で、自分自身の若い頃の体験を中心に名古屋のシネマスコーレ支配人の生きざまも描いた”止められるか、俺たちを”シリーズ第2弾です。

主演は井浦新、東出昌大、芋生悠です。

支配人役が東出昌大の今作をシネマスコーレで観たので頭の中が混乱しましたが、楽しくない訳がないですよ。

 

13. リバー、流れないでよ

最後はヨーロッパ企画の映画で、山口淳太監督作です。

タイムループ物をどうオチをつけるのか楽しみにしていたら、明後日の方向へ展開して終わるという反則技を掛けられました。

January 22, 2024

私的2023年海外ドキュメンタリー映画ランキング

海外ドキュメンタリー映画ランキングはベスト7になりました。

当初は他に2作入れてましたが、それらは山形国際ドキュメンタリー映画祭で観たことに気づいて外しました。

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海外ドキュメンタリー映画ベスト7

 

1. ミスター・ランズベルギス

大好きなセルゲイ・ロズニツァ監督の作品は2023年も複数本観た中で、今作が最高でした。

リトアニア・オランダ合作で、リトアニア独立革命の指導者だったヴィータウタス・ランズベルギスへのインタビューとアーカイブ映像から成るドキュメンタリーです。

リトアニア独立革命については全くの無知でしたので、最初はちんぷんかんぷんで2回目でようやくちょっとわかった気になった程度の理解度で、かつ長い上映時間のため居眠りしました。

でも、好きですね、大好きな映画です、保存版にしたいです。

 

2. JFK/新証言 知られざる陰謀[劇場版]

こちらも大好きなオリヴァー・ストーン監督の最新作で、かつて彼が監督した「JFK」のフォローアップでもあります。

非公開文書だったケネディ大統領暗殺事件の捜査資料が繰り上げで公開されたのを受けて作り上げたドキュメンタリーですが、J.F.ケネディの先見の明を確認でき、やはり黒幕はそっちかと唸ってしまいました。

今作も保存版にしたいです。

 

3. 破壊の自然史

今作もロズニツァ監督作で、ドイツ・オランダ・リトアニア合作です。

タイトルからは想像できないでしょうが、人類は破壊活動を続けているのだと主張するドキュメンタリーで、見せつけられると反省しきりでした。

 

4. キエフ裁判

今作もロズニツァ監督作で、オランダ・ウクライナ合作です。

ナチスがソ連国内で起こしたユダヤ人虐殺事件の裁判をアーカイブ映像で追ったドキュメンタリーですが、2022年に同監督作「バビ・ヤール」を観て初めてこの虐殺事件を知ったくらいの無知でしたので圧倒されるばかりでした。

 

5. 屋根の上のバイオリン弾き物語

日本では舞台の方が有名かもしれない「屋根の上のバイオリン弾き」、映画は1971年の同名作でお馴染みでしょうが、なぜか今、ドキュメンタリー映画が作られ、そこを不思議に思って観に行ったら魅了されてしまいました。

実に個性的なミュージカルだったんだ!と1971年の元の映画を観たほどです。

監督はダニエル・レイム、「ハロルドとリリアン」の監督でもあります。

 

6. コペンハーゲンに山を

今作はデンマーク映画で、映画自体も無名なら、題材になったコペンハーゲン市内のスキー場を知る人も日本ではごく僅かでしょう。

ところが、こんなスキー場を考えついた人も人なら実現させる人も人で、実にユニークで面白いドキュメンタリーでした。

 

7. カンフースタントマン 龍虎武師

中国映画ですけど、タイトルのカンフースタントマン相当の俳優として登場するのはサモ・ハン、ユエン・ウーピン、ドニー・イェン他ですので、香港のカンフー映画を支えた人たちのドキュメンタリーと思っていいでしょう。

香港映画は今や凋落しているのは知っていますが、その中でも一筋の光を見出すとしたらここなんだなと単なる郷愁ではなくて希望を持たせる映画でした。

January 21, 2024

私的2023年日本ドキュメンタリー映画ランキング

日本ドキュメンタリー映画ランキングです。

実は、山形国際ドキュメンタリー映画祭で観た1作(2024年に公開される「津島」)と愛知芸術文化センターで開催されたアートフィルム・フェスティバルで観た愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品も当初は入れてました。

その2作を外すとまたベスト9になりました。

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日本ドキュメンタリー映画ベスト9

 

1. シーナ&ロケッツ 鮎川誠~ロックと家族の絆

ファンでもなかったのに気になって観に行ったらベスト1、総合してもベスト1の映画となりました。

きっと寺井到監督の愛がベストの映画を作ったのでしょう。

シーナ&ロケッツは1978年結成でメンバー変更はあったものの、夫婦だったシーナと鮎川誠は抜けることなく続け、シーナは2015年、鮎川誠は2023年1月に亡くなっています。

つまり撮影中に亡くなった格好になり、それだけに肉親の声から感情がほとばしっていて、鮎川誠はロックだけではなく家族にもありったけの愛を注ぎ込み、注がれていたとスクリーンから熱く熱く伝わってきました。

 

2. アダミアニ 祈りの谷

今作を観た人は非常に少ないでしょうから簡潔に紹介すると、今作は日本・オランダ合作の竹岡寛俊監督作でグルジアのパンキシ渓谷に住む人たちを追っています。

パンキシ渓谷はチェチェン紛争時に大した証拠もなく「テロリストの巣窟」と呼ばれ、その悪影響を現代まで引きずり住民が二分されることあります。

私はパンキシ渓谷のことを全く知らず、なぜ日本人監督がグルジアで撮影して映画を作ったのか不思議でした。

竹岡監督はパンキシ渓谷の住民と知り合って2010年からドキュメンタリー制作を始め、2014、2019年にドキュメンタリー番組を作って今作が初の長編映画だそうです。

 

3. 沖縄スパイ戦史

今作は沖縄を題材にドキュメンタリーを作り出している三上智恵監督と大矢英代監督による、陸軍中野学校出身者が日本軍スパイとなって沖縄の人たちに紛れ、最終的には沖縄の人たちを犠牲にした第二次世界大戦時を描いた力作です。

中野学校のことや軍スパイがいたことは知識としては知っていても語られると別物でした。

 

4. ベイウォーク

今作は「なれのはて」に続く粂田剛監督作で、前作同様にマニラに住む日本人男性を追った映画ですが、慣れたせいか深く追っていて衝撃的な内容でした。

内容が内容だけに上映館は少なかったでしょうが、これが現実なんだと身に沁みました。

 

5. yokosuka1953

今作はぎりぎり映画館で観た、具体的には休館していた名演小劇場で不定期に開催されていた上映会の最後の上映作です。

おまけに舞台挨拶があり、木川剛志監督とナレーションを務めた津田寛治さんが登壇されたことをよく記憶しています。

ですから、神奈川県以外で観た方は非常に少ないと思われるので簡潔に紹介しますと、映像作家でもある和歌山大学教授の木川監督のSNSに同姓の木川さんの消息を尋ねるメッセージが届いたのがきっかけでその木川さん探しに協力し、戦後に生まれた混血児とその母親への差別が浮き彫りになっていくドキュメンタリーです。

人探しの旅になるのでミステリー要素もあり、次々と協力者が現れてくる躍動的な映画でした。

 

6. ハマのドン

やっとメジャーに近づきました。

ハマのドンこと藤木幸夫氏が横浜にカジノを作らせる訳にはいかねえと立ち向かった相手が菅義偉!

それを取材したのが松原文枝監督で、取材するうちに横浜市長選でカジノ推進派候補に対抗する候補を立てることになり、そして勝利した展開は面白いし熱かったです。

元々はテレビ朝日制作の番組2本で、それをまとめて編成し直したのが今作というのは不思議というか製作舞台裏を知りたくなります。

 

7. 国葬の日

今作はメジャーで、「なぜ君は総理大臣になれないのか」と「香川1区」で有名になり今やプロデューサーとして知られている大島新監督作です。

タイトルからわかるように2022年に強行された故安倍晋三氏の国葬の日に各地の様子を撮影した映画ですが、構成は単純に見えても、その日の実に興味深い日本人が浮き彫りとなっていました。

 

8. ライフ・イズ・クライミング

登山映画に滅法弱い私なので今作に惹かれたのも当然ですが、盲目のクライマー小林幸一郎とサイトガイドの鈴木直也が切に願った登頂が米国ユタ州にそびえ立つフィッシャー・タワーズだったのは嘘でしょ、と思いました。

そのずっと以前からの映像を見ているだけで冷や冷やして手に汗握り、登頂シーンはほっとしました。

一般に登頂シーンを撮影することは被写体に大きなリスクを与え、疑問視されることもあるくらいですが、このふたりのケースはリスクがあるのかないのかわからず、とりあえずプレッシャーを与えていると思って見ておけと覚悟する映画も珍しいです。

 

9. 戦影-売国奴と呼ばれた男たちの遺言状-

今作もマイナーなドキュメンタリーで、特定非営利活動法人映像記録製作、牧田敬祐監督の映画です。

簡潔に説明すると、渡辺冨美男という方は売国奴と呼ばれても戦後は日中友好活動に力を注ぎ、反戦の遺言として受けたインタビューを中心に構成されています。

渡辺氏はそもそもはスパイとして中国に渡っていたところを国民党軍に捕まってしまい、スパイであることがばれたら命はないと覚悟していた時に友人であった中国人軍人が自分を犠牲にして作戦を立てて助けてくれたことから目覚め、捕虜収容所でも反戦活動を続けていた筋金入りの反戦家でした。

よくぞ遺してくれました。

January 20, 2024

私的2023年海外映画旧作ランキング

昨日に続いて私的2023年海外映画旧作ランキングです。

なぜかまたベスト9になりました。

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海外映画旧作ベスト9

 

1. 雨にぬれた舗道(1969)

閉館した名古屋シネマテークでロバート・アルトマン監督特集として観ました。

特集されたのは初期の3作品ですが、3作すべてベスト入りしたのは流石のアルトマン監督だと思います。

米国映画なのにヨーロッパの匂いがし、主演のサンディ・デニスの演技は上品から狂気まで見事で魅了されました。

 

2. 不安は魂を食いつくす(1974)

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督特集として上映された作品で、西ドイツ映画なのに現代の社会問題を描いていました。

人種差別、性差別、村八分などの問題は愛情か金銭で解決したように見えても根本的解決は時間がかかるのかと思いながら観てました。

ファスビンダー監督のことは知らなかったので他の作品も観ましたが、そちらは今ひとつでした。

 

3. ヨーヨー(1964)

ピエール・エテックス レトロスペクティブとして上映されたフランス映画の中の1作です。

主演だけでなく監督もしている今作は大富豪から没落する人を描いた感動作でした。

エテックスのことも知らず、他の作品を観るとサイレント映画からコメディを演じていたところから監督までした方でした。

 

4. チャップリンの殺人狂時代(1947)

これだけは私の失態と反省しています。

チャップリン映画は敬遠していたところがあり、最近1作ずつ観ていたところにチャップリン特集をしてくれたのでできる限り観たら、76年前の映画を発見してしまいました。

コメディベースの映画ではありますが、背中がゾクッと寒くなる殺人狂を描いていて他のチャップリン映画とは一線を画していました。

 

5. ロバート・アルトマンのイメージズ(1972)

1位と同じくアルトマン監督特集で観て、今作は米国映画ではなくアイルランド映画で、日本未公開だったと後で知りました。

精神に異常をきたした女性の映画ですが、主演女優のスザンナ・ヨークも上手ければアルトマン監督も流石でした。

 

6. ロング・グッドバイ(1973)

上記と同じくアルトマン監督特集で観ましたが、アルトマン監督は多様な映画を作ってきたことはわかっていても今作はなんてスタイリッシュなんでしょうか。

もちろん主演のエリオット・グールドが魅力的だからでしょうが、設定と背景が見事で時代を感じさせませんでした。

 

7. 薔薇の名前(1986)

12ヶ月のシネマリレーとして毎月1作を上映していた内の1作で、ジャン=ジャック・アノー監督作で主演はショーン・コネリーです。

フランス・イタリア・西ドイツの合作で、コネリーは007のイメージからかけ離れた修道士を演じていますが、カッコ良さにはボンドっぽさもありました。

 

8. エドワード・ヤンの恋愛時代(1994)

旧作ベストでは最も近年の映画で、台湾映画です。

エドワード・ヤン監督作はこれまでにも観ていますが、「恋愛時代」なんて作っていたんだと興味本位で観たら事件も起こらない淡々と進む映画なのにずっと観ていられて、上手いなあと感心しました。

 

9. 未来惑星ザルドス(1974)

ジョン・プアマン監督作の英国映画、なんてことはどうでもよくて、ショーン・コネリー主演のトンデモSF映画と呼んでもいいくらいでした。

ジェームズ・ボンド俳優のコネリーがこんなぶっ飛んだ格好をしてぶっ飛んだSF映画に主演するなんて凄いよと観てましたが、コネリーだから成立した映画かもしれないとも思いました。

ある意味2023年はコネリー再発見の年でした。

January 18, 2024

私的2023年日本映画旧作ランキング

今年は元日に大地震、2日に大事故と続き、プライベートではリフォームのためすべきことが沢山あったので、更新を忘れていました。

今更ではありますが、2023年に映画館で観た映画の私的ランキングをジャンルに分けて連日更新を目指して挙げます。

 

2023年は、コロナ禍のため2020年からしばらく映画製作が滞った影響を受けて旧作が多く上映されました。

監督特集や名画特集、リストア版、以前から続いている午前十時の映画祭など掲げられる看板は色々ですが、個人的には知らない監督の映画が観られるので大歓迎です。

日本映画では特に大映映画を再評価したくなった年でした。

まずは邦画の旧作からベスト9を挙げます。

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日本映画旧作ベスト9

 

1. 医学としての水俣病 第Ⅰ~Ⅲ部(1975)

3本をまとめてしまって製作側には大変申し訳ありませんが、まとめて1本として評価したいと思います。

土本典昭監督と小川紳介監督の特集を名古屋シネマテーク閉館直前に上映していて、水俣病関連作は観てましたが、小川プロの作品はおそらく初めて観て、1975年の水俣の街でよく撮影したものだと感動しました。

流石は土本監督と小川監督だと改めて認識しました。 

 

 2. 夜の河(1956)

大映映画4Kリストア版特集の時に観て主演の山本富士子の艶に驚愕し、他の主演作を観たい、大映映画を観たいときっかけになった1本です。

山本富士子の和服の着こなしは今の女優の誰かができるだろうかと思うほど美しさ、色気、艶がありました。

山本富士子さんの人生もWikipediaで読んで、昔の映画会社のやり口や男尊女卑と戦ったことに感動しました。

監督は吉村公三郎、失礼なことに知りませんでした。

また、今作は京都ロケなので1950年代の京都が映し出され、イノダコーヒーが映った時は声が出そうになりました。

 

3. 雨月物語(1953)

今作も上記と同じく大映映画4Kリストア版で観て、主演の京マチ子の包容力というか何者にもなれる底力に圧倒されました。

山本富士子に比べれば決して美人ではないけれど女優としての実力を見せつけられ、他の京マチ子主演作も観たくなりました。

溝口健二監督作でモノクロ作品で原作が原作ですから、下手に作ればおどろおどろしいだけになるでしょうに流石です。

 

4. ニッポン国 古屋敷村(1982) 

今作も名古屋シネマテーク閉館直前の上映で観ました。

同じ小川紳介監督作の「1000年刻みの日時計 牧野村物語(1987)」の礎となるドキュメンタリーで、両作とも科学的アプローチを含んでいる点に驚きます。

当時はそれまでの映画とは視点が違う斬新な作品だったろうと感心します。

 

5. 蕨野行(わらびのこう)(2003) 

今作は山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された時に観たので本来なら入れてはいけないのですが、旧作なので縛りを甘くしました。

山形県飯豊町でロケされた映画なので地元の方が多く来ていらしていて、私は初見でロケ地に思い入れもなかったので浮いていたと思いますが、妙に感動しました。

今や亡き俳優も多く出演されていたこともありますが、圧倒的な説得力を感じました。

恩地日出夫監督の遺作です。

 

6. 剣(1964) 

今作もまた大映映画4Kリストア版で観ました。

主演の市川雷蔵は何本かの映画、眠狂四郎や陸軍中野学校で観ていて惚れてましたが、今作ではつかみどころのない青年の役を他の映画とは全く違う雰囲気で演じていました。

三隅研次監督による「剣」三部作のうちの1本なので他の2本(斬る、剣鬼)も観たいと思ってますが、いまだ観られません。

 

7. 女は二度生まれる(1961)

「幕末太陽傳」で惚れた川島雄三監督作で、若尾文子主演となれば、大映4Kリストア版上映を逃す訳にはいきませんでした。

きものの着こなしが抜群で見惚れていたら、洋装も着こなしていて、かつ色艶があって良かったです。

もちろん「夜の河」と同じく性差別には腹が立ちますが、しなやか、いやしたたかに生きていく女性を描いていました。

 

8. 炎上(1958)

これもまた大映4Kリストア版で、市川雷蔵主演なので観ました。

市川崑監督作なので手堅いと予想していたものの、あの三島由紀夫の「金閣寺」の映画化なので構えずに臨んだらカウンターパンチを食らいました。

寺の闇を描いた、当時なら問題作だったでしょう。

もちろん市川雷蔵は違う面を見せていました。

 

9. 山椒大夫(1954)

これもまた大映4Kリストア版、溝口健二監督作、そして田中絹代主演なので観ました。

大映の看板女優だった方たちの主演映画を観たいと頑張った甲斐があり、若き田中絹代をモノクロ映画で観ることができて良かったです。

January 05, 2024

2024年の抱負

新年あけましておめでとうございます。


新年最初の更新が遅くなりましたが、元日に大地震が起き、2日には羽田空港で旅客機と海保機が衝突する事故が起き、すっかり気持ちが萎えていました。

私には直接にも間接にも被害はありませんが、地震被害への政府の対応のノロさを見ていると腹が立ちます。

怒りを抑えつつ、2024年の抱負を書いておきます。


いつもの抱負は希望的目標を掲げますが、今年は具体的な目標を書きます。

購入した住宅のリフォームを終わらせてなるべく早く引っ越すことです。

内装までは進行中のリフォームで済みますが、家具や電化製品なども買う必要がありますし、地震被害を見るとやはりブロック塀は撤去してからでないと引っ越せないと思いました。

リフォームと並行して庭木の手入れをしてますが、試行錯誤しながら楽しみながら頑張ってます。


その他には、自伝みたいなものを書きたいです、市民サイエンティストになりたいです。

サイエンティストの方はプロでやってましたし、既に鳥見については入っている会があり、鳥について報告したこともありますので、何かしらできるでしょう。

自伝みたいなものは以前から書きたいと思っていることがあります。

どこまでできるのやらわかりませんが、挑戦あるのみです。


他は現状維持で良いです。

映画はナゴヤキネマ・ノイの開館を楽しみにしていて、定型的な映画は避けようと決めてます。

コーヒーはもっと美味く淹れられるようになりたいです。

そんなところでしょうか。

勤め人だった頃は職場に気をつかって歯に衣着せていたと思うこの頃です。

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