2024年の映画館で観たその他の映画について
2024年の映画館で観た映画のランキングは今回までです。総括は最初に挙げたので、最後はその他の部門でのランキング未満の話と、ワーストを挙げます。
まず旧作で、日本映画では劇映画1本とドキュメンタリー映画2本を挙げます。
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「真昼の暗黒」
監督今井正、脚本橋本忍の1956年の独立映画配給の本作を、私は知りませんでした。まだ駆け出しだった昭和の名優が多数出演しているだけでも観て良かった上に、ストーリーが冤罪をテーマにしていて、本人も家族も周囲も犯人の訳はないから裁判所はわかってくれると信じていた時代の話です。現在を見透かしているような展開にぞくっとしました。
「越後奥三面 山に生かされた日々」
今作もまた知らなかった作品でした。監督姫田忠義の1984年の民族文化映像研究所配給の本作をデジタルリマスターしたものをリバイバル上映されていて、「おく・・・何?」と読み方がわからないところから興味が湧いて観ました。記録として貴重なばかりか登場人物にも惹かれました。なお、「おくみおもて」と読みます。
「エドワード・サイード OUT OF PLACE」
「暮らしの思惑 佐藤真 RETROSPECTIVE」特集の1本として観ました。監督佐藤真、ALFAZBETとパラブラの配給で2005年の作品ながら4Kレストア版でした。20年前の映画でもそのままでは上映に耐えないと判断される時代なんですね。それはともかく、エドワード・サイードを知らず、観ながら何となく知った程度なので、宣伝文章から抜き書きすると、「パレスチナの窮状と真実を伝え、和解と共生の地平を探る」方だったそうです。サイードにも興味を持ちましたし、佐藤真監督の作品は観てましたのでいつものように感心しましたが、特集上映作の中で一番良くて後を引いてます。
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海外映画では、劇映画5本を挙げます。
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「テルマ&ルイーズ」
監督リドリー・スコットによる1991年の米国映画のタイトルこそ知っていても観たことがなく、4Kレストア版上映をしていたので観てみました。主演がスーザン・サランドンとジーナ・デイビスというのも魅力でした。当時の米国ならごく普通のシーンから始まり、若い女性ふたりが行き当たりばったりでドライブして旅に出て色んな目に遭って最後は・・・というストーリーが爽快でした。こんな映画をリドリー・スコットが撮っていたなんて知りませんでした。アンプラグド配給です。
「死刑台のメロディ」
エンニオ・モリコーネ特集上映の1作で4Kリマスター版で観ました。監督ジュリアーノ・モンタルドによる1991年のイタリア映画で、キングレコード配給です。今作もまたタイトル名は知っていても観たことがなく、モンタルド監督の名も初めて知り、観てビックリの冤罪物でした。さらに実録ドラマと宣伝されていますが、単なる再現を超えたドラマに心打たれました。名作ですね。
「エレクション 黒社会」
今作以下3作は「ジョニー・トー 漢の絆セレクション」特集上映で観ており、すべての作品は、監督ジョニー・トー、香港映画、AMGエンタテインメント配給です。2005年の今作は観たことがなく、ノワール作と言いますけど謂わばヤクザ映画です。日本のヤクザ映画はあまり好きではないのに香港映画だと結構好きなのです。わくわくしました。
「エレクション 死の報復」
2006年の本作は上記の作品の続編ながら日本未公開だったそうです。続編がすぐ観られる幸せを思いっきり味わいましたが、もはや単なるヤクザ映画ではなくて時代の変遷を感じさせるドラマでした。
「エグザイル/絆」
2006年の本作はアンソニー・ウォン主演で、最近は中国政府に批判的なために干されていてお目にかかる機会が非常に少なくなったためアンソニーを観るためだけに行ったようなものでしたが、何か良いのです。カッコいいです。
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その他としては、基本的にライブ映像だけど映画化を意識して撮影して編集した作品を2作挙げます。
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「ストップ・メイキング・センス」
トーキング・ヘッズの1984年の伝説のライブを4Kレストア版として上映されていました。監督は何とジョナサン・デミ。1984年の米国映画、ギャガ配給です。私は当時のトーキング・ヘッズを知らず、実は興味を持ったのは2020年の「アメリカン・ユートピア」でデビッド・バーンを観てからでした。だから、2作セットでの評価をしてしまいますが、創造的で良いなあと思います。
「ナショナル・シアター・ライブ『オセロー』」
英国国立劇場ロイヤル・ナショナル・シアターが厳選する名舞台を映像化した「ナショナル・シアター・ライブ」シリーズ中の1作が本作で、舞台美術に興味があるのでストーリーそっちのけで観てました。単なる舞台中継は冷める私が珍しく食らいついてました。
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最後にワースト作品を、たまたまながら日本劇映画3本挙げます。
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「はじまりの日」
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給、日比遊一が監督・脚本・プロデュースを務めた本作は、出身地の名古屋を舞台にした映画をこれまでも作った日比監督ならではではありますが、主人公そのもののような経歴を持つ中村耕一に主演させただけでも疑問があり、ストーリーも名古屋を生かしたいためか不自然で、変にミュージカル仕立ての部分もあり、怒りまくってました。
「52ヘルツのクジラたち」
ギャガ配給の監督成島出による本作は、現在から過去を振り返る形式で物語は進みますが、過去と現在が独立した話のようなのに主人公は同じで、何のための映画なのかさっぱり理解できず、怒ってました。原作は2021年本屋大賞受賞作の同名ベストセラーだそうで、私は未読ながら読む気にもなりませんでした。
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長くかかりましたが、2024年の映画についてはこれにて終わります。書いてきて思うのが、映画の評価は映画の出来、ストーリー展開、演技の上手さ、演出の上手さ、時代との相性、個人的な想いとの合致度など基準は人によって違い、映画によっても違い、あまり当てになりません。賞レースも始まってますが、あれも参考程度に留めておくのが良いと思います。