2024年に映画館で観た日本ドキュメンタリー映画のランキング
2024年に映画館で観た日本ドキュメンタリー映画のランキングです。11位まで挙げました。
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1位 無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語
日本ドキュメンタリー映画に近年ありがちな経緯ながら、北海道のuhbのテレビ番組として製作したものが各賞を受賞したので映画版を製作したものです。監督は湊寛、太秦配給です。
プロレスは嫌いな私なのに、今作には惹かれました。サムソン宮本が作った新根室プロレスの人気がどんどん高くなっていた時に解散宣言がされ、その理由がサムソン宮本の病気だったというのもファンには衝撃的ですが、その後、サムソン宮本の死までと死後の話が感動的でした。家族の愛と仲間の続けようとする熱意がありきたりと言えばそれまでですが、上手い作りなのでしょう。名古屋で観た後に映画館以外で関連イベントが開催されたのも知って、やりたくなるのも頷けました。
2位 イーちゃんの白い杖 特別編
今作も。テレビ静岡がテレビ番組として製作されて各賞受賞し、2018年に「イーちゃんの白い杖」として映画版が公開され、それに映像を追加したのが今回の特別編です。監督は橋本真理子で、25年間取材してます。そして、配給はシネマイーラ!私が度々行くミニシアターです。
前作「イーちゃんの白い杖」も観てますが、当時はあまり良い印象を持ちませんでした。不幸な人を取り上げて評価を得ようとしているように見えたからです。ところが、今作は至って明るく、歳を取ると共に亡くなる人も病気をする人も出てくるのに、命の危険に晒される車椅子の弟と盲目の姉は深い絆を築いていて誰も入れない姿は神々しいくらいでした。そして姉は自立して行きます。やっと製作意図の本音が見え、良い出来に仕上がってます。
3位 ミルクの中のイワナ
坂本麻人監督が作り上げた今作はWhole Universeの配給であり、つまり完全なるインディペンデント映画です。
マイナーな作品で世間の評価もさほど高くないけれど、理系心を掻き立てられて興奮しました。イワナが高い遺伝的多様性を持つと示されたところでもうノックダウンされてました。乗せられればもう面白くて面白くて、さらに環境DNAを調べれば存在がわかると言い出したところでワクワクしてました。ポスターも美しい。
4位 BORDER 戦場記者✕イスラム国
TBSがドキュメンタリー映画祭を映画館で年1回開催していて、形式はかちっと決まってない印象はあるものの、2024年の第4回で今作を観ました。監督は須賀川拓です。
以前のTBSドキュメンタリー映画祭で須賀川さんが監督ではなく海外駐在記者として出演されていたのを観ていたので、相変わらずリスクを冒しながらも万全の安全策を取る姿に感心して観てましたが、イスラム国首脳部にインタビューする場面はハラハラドキドキ物でした。骨太な作品から彼の本気を感じられて良かったです。
5位 ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ
代島治彦監督作なので三里塚か何かか?と思ったら、樋田毅のルポルタージュを原案にして激しい学生運動の時代を切り取って、インタビューと鴻上尚史による短編ドラマで構成したドキュメンタリーだったので驚きました。ノンデライコ配給です。
今作は樋田毅さんの舞台挨拶があった時に観たので、映画だけでなく過去に何があったのかを記す熱意に打たれたことを覚えています。学生の派閥が力を持って傍若無人に彼らの理想に突き進み、個人も尊重されず大学の力が非常に弱く、学生が犠牲になったことが良くわかりました。
6位 ヤジと民主主義 劇場拡大版
本作もまた、事件の起こった札幌にあるテレビ局HBCがテレビ番組を製作して各賞を受賞し、書籍化もされて映画化に至ったものです。山崎裕侍監督で、配給はKADOKAWAです。
あの事件当時も理不尽さに憤ってましたが、今作で詳細を知るとますます憤りが強くなりました。何なんですかね!政治家もそうですけど警察や検察や裁判所も腐ってます。
7位 戦雲(いくさふむ)
沖縄の琉球朝日放送に居た時から映画を作っている三上智恵監督の作品で、東風配給です。ライフワークとも言える沖縄を過去から現在まで、さらに未来を見通す取材には感謝いたします。
沖縄の島々に自衛隊施設が建てられつつあることは知ってましたが、改めてまとめられた計画を見ると国は戦争したいとしか見えず、住民を排除したい意図がありありとわかりました。さらに具体的なことが描かれて、島々の人々がこの状態を良しとしかねない深刻な状況を突きつけられました。沖縄で起きていることは自分の住む地域でも起こる可能性があるので、国民は観るべきと思います。
8位 あなたのおみとり
「東京干潟」と「蟹の惑星」で名前を覚えた村上浩康監督が、実の父親を実の母親が看取る姿を撮影した本作はかなり反響が大きかったと記憶しています。リガード配給です。
監督が自分の父親の死に行く様と母親の介護する様を撮影したと聞いた時は意味がわかりませんでした。でも、観て理解しました、安らかな死と何度も聞いていたけれどこれなんだと。単に延命させることが良いことではなく、死に行くべき時に死なせることでした。
9位 漫才協会 THE MOVIE 舞台の上の懲りない面々
漫才コンビのナイツの塙宣之が監督した本作は、なんと漫才協会を描いていて、会長が監督自身。頭がくらくらしそうな宣伝映画になっていると思いきや、さにあらず。ちゃんとしたドキュメンタリーになってました。配給もKADOKAWAです。
漫才協会なるものも知らず、今の漫才の状況もあまりよくわかっておらず、漫才協会会長が塙さんとも知らず、それなのに理解できて楽しめたので、上手くできているのでしょう。久しぶりに寄席に行きたくなりました。
10位 アイアム・ア・コメディアン
描かれているのはウーマンラッシュアワーの村本大輔、監督は日向史有、配給はSPACE SHOWER FILMSで、今作もまた異色のドキュメンタリーです。
お笑いはほとんど見ないのでウーマンラッシュアワーも村本大輔もよくわかっておらず、村本さんがテレビから追い出されたことぐらいしか知らなかったので、順序立てている訳でもないのに経緯のわかる構成には感心して驚きました。そして、覚悟を持って本音を言っている村本大輔と支える周囲に未来を感じました。
11位 その鼓動に耳をあてよ
今作も地方テレビ局の作ったドキュメンタリーながら、十八番の東海テレビの劇場公開ドキュメンタリー第15弾です。足立拓朗初監督作で、プロデューサーはいつもの阿武野勝彦と遂にという感のある土方宏史です。配給も東海テレビです。
取材先は東海テレビお膝元の名古屋掖済会病院救命救急で、よく撮影できたなと思いますし、コロナ禍の時も撮影していたと聞くと構えてしまいましたが、救急医の素顔と救命救急の実状が伝わり、作ってくれて良かったです。掖済会病院は知らなかったのですが、この病院の成り立ちと方針を知って身近に感じました。
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